繰り返す偶然
今までで一番印象に残っている男性との出会い。 わたしの働いていた会社と、彼の働いている会社は同じビルに入っていました。 とは言っても、毎日何千人という人が勤務する都内のそのビルで、お互い見たことのある顔の一つにしか過ぎませんでした。 正直に言うと、彼の事は顔はあまり好みじゃないけど、いい体つきしてるなぁとは思ってました。スポーツマンタイプが好きなので、どんなスポーツしてるのかな、程度の興味はありました。 そんなある休日、一人で街をぶらぶらしていると突然声をかけて来る男性が。 キャッチセールス、ではなく、ビルでたまに見かけるあの彼でした。 「あの、いつもいる人ですよね?」 私服だったこともあり、誰だか一瞬わからず混乱してしまいました。 その場は社交辞令の言葉だけをお互い交わし、名前も聞かずに別れました。 何と無く、彼が気になる存在になったのはその偶然の出会いからです。 運命のいたずらとはこういうことなのか、その翌日から、勤務先のエレベーターや最寄りの駅、街中で彼とばったり出くわすことが増えたのです。 お互い、偶然出会う度に会釈を交わしていたのですが、不自然すぎるくらいよく会うので、ある時どちらからともなく、言いました。 「もういい加減、一緒に食事でも行きましょうか」